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2023年10月期の振り返りを聞かせてください。

約3年にわたるコロナ禍が収束に向かい、大学の学生数(大学院を含む)は前年から1.5万人増加の294.6万人と増加しています。その中で、主力の不動産賃貸管理事業においては、自社物件開発も好評で、当社の収益基盤である物件管理戸数は当初計画を上回る水準で堅調に増加し、入居率も99.9%と引き続き高水準を維持するなど、当期も順調に推移しました。高齢者住宅事業は、各種規制が徐々に緩和され、足もとの入居状況は改善しました。なお当セグメントを中心的に担うグランユニライフケアサービスの全株式を、学研ホールディングスの子会社・学研ココファンに譲渡し、今後、当社は経営リソースを学生マンション事業に集中させていきます。
世界的な入出国規制の影響を受けていた日本語学校事業は、長期にわたり待機留学生や受け入れ時期の遅延が発生していましたが、当該規制が大幅に緩和されたことで、事業収益も大幅に改善しました。
連結ベースで売上・利益ともに前期から2桁成長を実現し、当初の計画通り順調に進めることができた1年だったと思います。

中期経営計画「GT01」の最終年度としての評価はいかがですか。

中期経営計画「GT01」は、コロナ禍の2021年10月期からスタートしましたが、この3年間を振り返ると、好調な経営成績を維持し、経営数値目標を超過達成するなど、2030年に向けた長期ビジョン「GrowTogether 2030」に向けて着実に前進できたと評価しています。
特にコロナ禍ではさまざまな制約がある中で、早期から、非対面接客や見学のセルフ化などを推し進めました。マンション賃貸のDX化として、これまで対面で行っていた重要事項説明をオンライン化し京都に開設した「お客様サポートセンター」に集約するなどし、お客様の負担軽減だけではなく現場の業務効率の改善も図りました。「UniLife」ブランドは、しっかりと認知が広がり、社員の努力もあり、賃貸、管理、開発の3事業がそれぞれの枠を超えて連携する「三位一体」の組織力も着実に強化されたと感じます。こうした社員全員の努力に、順調な物件開発が後押しし、好調な経営成果につながりました。

次期中期経営計画「GT02」の重点方針や成長戦略を聞かせてください。

長期ビジョンの次期フェーズとなる中期経営計画「GT02」が2024年10月期から始まります。既存事業と新規事業をつなげるための「両利きの経営」の実行体制を強化するとともに、「社員全員の経営」を実現し、生産性向上を図るための組織づくりが柱です。
BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、およびBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を3本柱とする業務改革を進めます。人的資本・知的資本・気候変動・事業ポートフォリオの重要項目に取り組むことで、長期的かつ持続的な企業価値向上に努めていきます。

「GT02」における業務改革とは具体的にどのような内容ですか。

人的資本に関しては、「従業員は資産である」というコンセプトのもと、生活と仕事の調和、新しいワークスタイルへの対応、ダイバーシティ、教育及び社員エンゲージメント向上を基本方針として、人事や教育研修等の制度を再設計します。人材の価値を最大限に引き出すことで、「両利きの経営」を実践していきます。
知的資本では、データに基づいた客観的な分析を行う「データドリブン文化」を醸成し、「人的資本・M&A 連動」の考え方にたち、DXリーダーの配置、DXベンチャーへの投資等を通じ、顧客体験向上とコスト削減の両立による競争優位性の構築を図っていきます。
事業ポートフォリオについては総額約300億円の投資を行う方針です。
自社物件開発に270億円、新規事業/DX投資に20億円、そしてサステナビリティ/更新投資に10億円、オーガニックグロースとM&Aグロースを両立させ、成長スピードを加速します。学生マンション事業の成長性はまだまだ高く、「UniLife」にしかできない学生育成サイクルを回していきながら、更なる拡大を目指します。当社の事業が「新価値創造 学生マンション」として日本社会の重要インフラである姿を目指し、新規事業領域への投資も進めていきます。学生マンション分野で唯一無二の存在であり続けるため、これらの施策を通じて新たな価値提供を実現していきます。

ESGの取り組みについて進捗を教えてください。

ESGの「E」(環境)において、当社は気候変動等に関するリスクと機会の分析及び公表を行っており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿って定性的な情報開示をはじめ、社会環境・地球環境の保全に対する積極的な活動を行っています。今後は定量的情報開示を行いながら、ZEHをはじめとする環境対応物件の展開、物件に対するリノベーションや再エネ活用を推進し、事業を通じた社会課題解決につながるソリューション開発に努めていきます。
「S」(社会)の面では、気候変動対応における情報の定量化には難しさを感じてはいますが、不動産オーナーを含めたバリューチェーン全体での取り組みを進めようと検討しています。
当社では、学生向け住宅の提供や学習支援等の事業そのものが、社会性の高い取り組みだと認識しております。この事業を続けていきながら、気候変動対応について学生とともに考え活動することで、価値共創を実現するエコシステムを構築していきます。

  • ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略語。
    エネルギー収支をゼロ以下にする住宅を意味します。

株主還元について聞かせてください。

株主の皆様への利益還元は、経営の最重要課題の一つです。継続的かつ安定的な配当を実施するとともに、持続的な成長と企業価値向上のための積極的な事業展開やさまざまなリスクに備えるための財務健全性とのバランスを考慮したうえで、業績に応じた利益配分を行うことを基本方針に、連結総還元性向20%を目標にしています。

最後に投資家の皆さまにメッセージをお願いします。

少子化の中でも高品質な学生マンションは不足しているのが現実であり、当社ではこれからも学生マンション事業の成長余地は高いと考えます。今後もしっかりと経営基盤を固めながら、学生をはじめとする、お客様の声や、社員の積極的なアイデアを活かして、安心・安全・快適に住める住まいの充足と社会のニーズに応えていきます。皆様には引き続き温かくご支援いただけますようお願い申し上げます。