トップインタビュー

まずは2022年10月期のレビューをお願いします。

コロナ禍も3年目となり、大学では対面授業がメインに戻る一方、日常生活においては非対面サービスへの需要がさらに高まるなどの環境変化も見られた中、当社は早くからウィズコロナに向けた対策を講じてきました。当期、精力的に募集活動を展開した結果、主力の学生マンション事業では、新規物件開発が順調に進み物件管理戸数が増加したほか、募集活動も計画通り進み、2022年4月時点の入居率は99.9%を維持しました。高齢者住宅事業も計画通りに進展し、当期の連結業績は売上・利益ともに引き続き安定的に伸長しました。想定通りに業績が伸長する中、私は改めて人材育成を強化する必要性を感じています。当社を選んで入社してくれた社員が、働きがいをもって当社へのエンゲージメントを高められるよう、人材戦略は経営に直結する重要テーマと捉えて人的資本への投資を進めていきます。

中期経営計画「GT01」の2年目が終わりました。
不動産賃貸管理事業の進捗について教えてください。

不動産賃貸管理事業は新規物件開発が順調に推移し、管理コストや利益率も目標を超過達成しました。「UniLife」ブランドは、しっかりとコンセプトのある食事付き学生マンションとしての認知も広がっており、加えてコロナ禍で進めた非対面接客、家具・家電付き物件の促進、効率的なウェブ広告の展開、募集活動における学校との連携なども事業拡大に奏功しました。賃貸、管理、開発の3部門がそれぞれの枠を超えて連携する「三位一体」の組織力も着実に強化されていると感じます。
またDXに関しては、昨年はCRM(顧客関係管理)を中心に導入したほか、不動産オーナーさま向けに、月次管理報告などをアプリ上で提供する取り組みも始めました。さらに、2022年5月の不動産取引の電子契約解禁を受けて京都に「お客様サポートセンター」を開設し、宅地建物取引士がオンラインで画面越しに「重要事項説明書」の内容説明を行う環境も整いました。今後は電子契約システムの導入も予定しており、引き続きDX推進を継続することで、業務の効率化と顧客体験価値の創出を図っていきます。

高齢者住宅事業や新規事業に関して、中期経営計画の進捗はいかがでしたか。

高齢者住宅事業では、リアルとオンラインのハイブリッド型で、「公民館化」を推進しています。当社が運営する住宅において、小規模ながらもリアルで地域住民参加型イベントを地域包括支援センターとのコラボレーションにて開催しました。こうした「公民館化」に向けた取り組みに加え、高齢者住宅への入居時における所有不動産の利活用や売却支援等の高齢者サポート事業も開始しています。また、当社の運営住宅の周辺エリアにおける在宅生活者に向けて、福祉用具の貸し出しや介護リフォームのご提案など、高齢者サポートの深掘りを進めています。今後は、サービスエリアの拡大を図りながら、高齢者の生活の安全性に寄与する事業展開にも注力していきます。
新規事業については、グループシナジーを発揮しうる領域を中心に、若者の成長支援、付加価値サービスの提供を推進しました。日本語学校においては、一般コースを開設し、留学生や外国人材の日本語教育に加え、将来的にはグループ内就労といった外国人材の活躍促進につながる取り組みも考えています。加えて今年10月からは、当社の運営管理する介護付き有料老人ホーム「グランメゾン迎賓館京都桂川」にて、海外先端企業と協力し、VR(バーチャル・リアリティ)での脳トレーニングゲームを活用し、高齢者の認知機能の維持向上を目的とした実証実験を行っています。

今後の成長戦略について聞かせてください。

今後の成長戦略としては、まずは引き続き物件開発を積極的に行っていくことが肝要です。建設コストの高騰も踏まえ、新築・中古物件の両面から開発を手掛けていきます。また、前述したように、DX化のさらなる推進に向けた設備投資も増強を図ります。新規事業に関連する部分では、ウィズコロナへの転換が図られる中で、これまで制約のあった海外進出についても、準備を進めます。さらに、当社では、若者支援サービスの一環として、学生支援イベント「Little You」の冠スポンサーを2年連続で務めたほか、「未来応援プロジェクト」として、大学・専門学校と提携し、学生の家賃の一部を負担するサポートを行ってきました。こうした取り組みも引き続き積極的に行っていく考えです。

ESGの取り組みについては、どのような進捗がありますか。

当社が事業として行っている学生向け住宅の提供や学習支援、高齢者向け住宅の提供は、社会性の高い事業であり、ESGの「S」(社会)の取り組みに直結するものだと捉えています。加えて、人材に関しては、創業以来、人を大事にすることを理念として、経営の中核に据えてきましたので、今後は人的資本へ向けた具体的な投資内容をより明確化していきます。また、深刻化している気候変動対応についても取り組みを開始しました。賃貸住宅での気候変動の取り組みは、当社一社の努力で成果を出すことの難しい部分ではありますが、不動産オーナーを含めたバリューチェーン全体で取り組みを加速できるよう、検討を進めています。2021年12月には、社長を委員長に、取締役や執行役員で構成するサステナビリティ委員会が発足しました。これまで、当社の重要課題(マテリアリティ)やTCFD対応などについて、サステナビリティ推進室の作成した原案をもとに協議を進めており、今後は取締役会にて社外取締役の意見も取り込みながら、マテリアリティをはじめとするサステナビリティの視点を次期中期経営計画に織り込んでいきます。

株主還元について聞かせてください。

株主の皆さまへの利益還元は、経営の最重要課題の一つです。成長に向けた投資とのバランスを勘案しながら、連結総還元性向20%を目標に、毎期、安定的かつ継続的な配当の実施に努めています。当期末の1株当たり配当金は、前期末より4円増配の普通配当39円に創業45周年記念配当5円を加えた44円とさせていただきました。また自己株式の取得についても機動的に実施する方針としており、当期は、113,900株の自己株式を取得しました。

最後に読者の皆さまにメッセージをお願いします。

当社の学生マンションは高い入居率を維持しており、新たに開発したエリアの物件にはキャンセル待ちも出ています。少子化の中でも学生マンションは現実として不足しており、学生マンション事業は今後も伸びる余地が高いと考えます。今後もしっかりと経営基盤を固めながら、学生の皆さまが安心・安全・快適に住める住まいの充足と、社会のニーズに応えていきます。そしてその先には、当社が長期ビジョンとして掲げるありたい姿、「『アビリティ(総合的人間力)』の芽を育て、社会課題の解決に貢献する」「人間性とテクノロジーの融合による、ジェイ・エス・ビーだけの価値創出」「『UniLife』はグローバル・トップブランドへ」を必ずや成し遂げたいと強く思っています。皆さまには引き続き温かくご支援いただけますようお願い申し上げます。