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2025年10月期の振り返りを聞かせてください。

 当期の連結業績は、売上高は当初計画を上回る水準で推移しましたが、利益に関しては、2025年12月に発表したとおり追加的租税負担等の経常的ではない一時的費用を計上したことから、当初目標を下回る結果となりました。しかし、事業は計画通りしっかりと進捗しており、当社の重要な経営指標の一つである入居率については、2025年4月末時点で99.9%と、引き続き高水準の稼働率を維持したほか、管理戸数も、昨今の建築費の高騰の中で、当期は約4,300戸の純増となりました。管理戸数の拡大は、収益性を高めることが重要と考え、高利益率のサブリース物件の獲得や自社物件開発を中心に注力すると同時に、三重大学や福井大学近くの自社物件を当社のサブリース付きで売却するなど、ROE改善の観点から総資産回転率の向上も進めました。
一方、積み残した課題は生産性の向上です。原価や人件費が上昇する中で、DXの活用をさらに進めていく必要性を感じています。

安藤 DXに関しては、外部の知見も取り込めるよう積極的なDX投資も実行し、業務の進め方の抜本的な見直しにつなげていきたいと考えています。また、コスト高を反映した家賃設定も経営基盤の強化という視点では重要な課題と認識しています。

中期経営計画の進捗状況を聞かせてください。

 2025年10月期は、3カ年中期経営計画「GT02」の2年目、折り返しの1年でしたが、入居率や管理戸数などの指標から順調に進捗していると認識しています。私は2025年2月に社長に就任した際に、「コーポレート・ガバナンスの再構築と強化」「既存事業のさらなる拡大」「学生支援サービスと海外展開」「人的資本」の4つに注力することを宣言し、鋭意進めてまいりました。
ガバナンスに関しては、不祥事の再発防止策をしっかりと進めると同時に、社員に対する教育・研修も充実させています。既存事業は前述の通り、現在、順調に進んでいます。学生支援サービスに関しては、これまで注力してきた安心・安全・快適な住まいの提供に加え、例えば、福岡市との連携で実施した福岡城の清掃イベントのように、入居者の方々が大学に通学するだけではご経験できないような学びや体験の機会をご提供し、社会課題に対する意識の醸成や、入居者同士が仲間を作るきっかけづくりの場を提供しています。こうした取り組みは、入居者や保護者の方々、当社の社員などの声も聞きながらコンテンツづくりを進めています。「海外展開」については現在、英語圏を中心に、実地調査を進めています。4つ目の人的資本に関しては、男性社員の育児休暇取得率が50%を超える水準へ上昇したほか、女性管理職比率も増えるなど、多様な人材が活躍できる、働きやすい環境づくりに向けた取り組みの成果を確認しており、引き続き注力していきます。私は、人的資本にかかる資金は費用ではなく投資だと捉えています。丁寧に人材を育成することが円滑な事業運営につながると考え、この循環を目指して積極的に人的資本への投資を行う予定です。

安藤 「GT02」を進める上で、大きな柱の一つである業務改革については、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)やシェアードサービスセンター化なども順次進めています。内容を年々ブラッシュアップさせることで、業務効率化も進んできています。人的資本に関しては、ベースアップや給与・人事制度の見直し・改革も、人的資本投資の一環として、前向きに検討していきます。

業績や中期経営計画が順調に進捗している理由をどのように認識していますか。

 事業の進捗は安定した受注がカギとなります。その点では、学生向けマンションに特化しているという当社の事業スキーム自体に高い優位性があると考えます。学生に特化することでご退去時期も想定しやすく、そこに向けた戦略的な計画の立案・策定を通じて、次の入居者募集へとつなげられます。物件開発に関しても、大学の動向などをしっかりと調査した上での物件供給が可能となります。物件の企画開発事業、リーシングを行う賃貸事業、そして入居者・建物管理を行うメンテナンス事業の3部門が、当社内で完結し、三位一体となって相互にコミュニケーションを図りながら、学生のニーズに応える場所やサービスを提供できる点は、非常に大きな強みだと認識しています。また人事部門を中心に、しっかりと社員に対する教育・研修機会を提供できている点も、順調な事業成長を支えています。

安藤 学生マンション事業自体が、やるべきことをしっかりやることで安定して成長できるという特性もあると思います。順調な成長を遂げてはいますが、その一方で、2024年の不祥事の発生で、社内の経営基盤はまだまだ改善しなければならない課題も多いと再認識しました。本件に関しては、当社の経営陣だけでなく社員も前を向いて、強固な経営基盤の構築に取り組んでくれているところに期待を持てています。経営基盤をより骨太にし、持続的な事業成長へとつなげていきます。

2030年を見据えた事業ポートフォリオの在り方について教えてください。

 事業ポートフォリオの中心は、既存の中核事業の成長が柱であることに変わりはありませんが、中核事業の周辺領域で、新規事業の種も蒔いていきます。例えば、2025年9月に個別指導塾のスクールTOMASと提携し、入居者がお部屋でアルバイトができる「お部屋deバイト」サービスの展開に向けて準備を進めています。こうした教育サービスは、優秀な講師を確保されたい同社と、充実した学生生活の支援を手がける当社とのWin-Winの取り組みになると考えます。

安藤 既存の入居者だけでなく、大学のご卒業と同時に学生マンションを退去される年間約2~3万人の卒業生に向けても、住居以外のサービス面で長く当社とのつながりを維持できるようなプラットフォームの確立を模索しています。長期の関係づくりを目的とした新たな事業化も進めていきたいと考えます。

ESGの取り組みについて、進捗をお聞かせください。

 環境に関しては2024年に初めて参加した国際的な環境評価機関・CDPによる気候変動プログラムにおいて、2025年は8段階中、上から三番目の「B」評価へとスコアアップを果たすことができました。このほか、自社物件だけに限らず、当社が他の事業主からお預かりする物件に関しても、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)で評価された物件を取得するなど、環境配慮を重視した取り組みを進めています。また社員や入居者の方々に対しても、環境意識の醸成・浸透を図っています。
社会面に関しては、学生向けマンションの物件開発・賃貸・管理という事業そのものが、社会課題の解決に資する事業だと認識しています。加えて、前述した人的資本に対する取り組みも引き続き注力していきます。
ガバナンスに関しては、不適切な経費使用問題から見えてきた内部統制の不備にしっかりと対応し、再発防止施策をしっかりと進めることを優先課題としてきました。特に、特別調査委員会等から指摘のあった大株主とのコミュニケーションや取締役会の運営の在り方については見直しを進めています。コーポレートガバナンス・コードや、企業不祥事の再発防止に関する研修も、役員はもちろん、社員も対象に含めて開催しており、ガバナンス機能の向上や、コンプライアンスやガバナンスの重要性の浸透を図っています。

安藤 環境面では、事業活動でのCO2排出量の可視化や目標設定など、取り組むべき具体的アクションはまだまだある認識です。これら取り組みを着実に進めることで、各評価機関からの評価向上にもつなげたいと思います。社会に関する視点では、2025年8月に京都府の福知山市や地域のスポーツ振興団体と連携し、入居者を対象にした4日間の成長支援プログラムを実施しました。地域や世界に変化をもらしてきた福知山の変化人(へんかびと)さん、元サッカー日本代表選手の小野伸二さんらとの対話やワークを通じ、その変化の原動力を探っていくという内容です。学生マンションに「住む」だけでなく、そこから成長機会や学びにつながる付加価値を生み出せるよう、今後も多様なプログラム開発を進めます。

最後に株主の皆様へのメッセージをお願いします。

 株主還元は経営の最重要課題の一つと位置付けており、連結配当性向40%を目標に実施していきます。長期ビジョン「GrowTogether 2030」で掲げたように、基幹ブランド「UniLife」を世界のトップブランドに押し上げられるよう、安心・安全・快適な住まいの提供に加えて、学生支援サービスにも注力し、付加価値の向上と差別化を図っていきます。

安藤 当社は経営理念に「健全な若者の育成」を掲げています。住まいだけでなく、学び育つ場所として、「UniLife」ブランドを高めていけるよう尽力してまいります。

森・安藤 株主の皆様におかれましては、引き続き当社をご支援いただけますようよろしくお願い申し上げます。